会社を経営していて決算が近づいてくると、今期の税金がどのくらいになるのか気になりますよね。
税理士と顧問契約をしていて月次決算を行っていれば、納税予想額を教えてくれるので問題ありません。しかし小規模な会社などで自社で経理をして決算は税理士に依頼する、などという場合納税予想額を計算することは通常難しいです。
しかしご自身でクラウド会計などを使って経理を行い、ある程度現状の損益を把握することができる場合、簡単な法人税の計算方法を知っていれば今期の税金をある程度予測することは可能です。
今回は法人税の計算方法をできるだけシンプル理解して頂き、顧問税理士がいなくても納税額の予測ができる方法を解説したいと思います。
なお資本金が1,000万円以上のような大きな会社の場合にはあてはまりませんのでご了承ください。
Contents
まずは税金の一般的な計算の仕組みを理解しよう
まず税金の計算というのは一般的に次のように計算されると考えて下さい。
所得 × 税率 = 税額
非常にシンプルな計算になっていると思います。これを見ると、税率は法人税の場合基本的には一定ですので、「所得」が計算できれば税額が計算できるということがわかると思います。
またこの「所得」の計算方法についても、シンプルに理解できるよう極力無駄なものを省略して解説致しますのでご安心下さい。
では具体的に法人税はどのように計算するのか以下の6STEPで説明したいと思います。
法人税の計算は損益計算書の「当期純利益」からスタート
法人税の所得は、損益計算書の当期純利益をベースに計算されます。したがってまず損益計算書がきちんと出来上がっていることが前提になります。
ただここでは税金を予測することを目的にしますので、当期純利益は見込みの数値で結構です。月次決算を行っているのであれば、今期の現時点での実績と残りの期間の見込みを合わせた数値で良いと思います。
当期純利益からスタートして、税金計算上、足すものと引くものを調整して所得を計算します。
足すものが多ければ所得が増え、税金も高くなります。
引くものが多ければ所得が減り、税金は安くなります。
では次に何を足して、何をひくのか説明したいと思います。
「当期純利益」から所得を加算するもの
当期純利益に足すものというのは、損益計算書上は経費になっているけれど、法人税の計算上は経費にならないものと考えて下さい(厳密にはこれだけではありませんが、簡易的に理解するにはこれで十分です)。よくわからない場合はあまり深く考えず、次をお読みください。
小規模な法人を前提として考えると、たとえば次のようなものがあります。他にもたくさんありますが、よくあるもののみ記載致します。
・損益計算書上、経費となっている法人税、住民税の金額
・損益計算書上、経費となっている賞与引当金、退職給付引当金の金額
・損益計算書上、経費となっている交際費の金額(800万円を超える部分)
・損益計算書上、経費となっている寄付金の金額
などです。
これらのものが損益計算書上に入っていれば、これらの金額は加算します。
「当期純利益」から所得を減算するもの
逆に当期純利益から引くものというのは、損益計算書上収益になっているけれど、法人税の計算上は収益にならないものと考えて下さい(こちらも簡易的な理解です)。
例としては次のようなものがあります。こちらもよくあるもののみ記載致します。
・損益計算書上、収益となっている法人税、住民税の還付金
・損益計算書上、収益となっている配当金の金額
などです。
これらのものが損益計算書上に入っていれば、これらの金額は減算します。
前期以前に欠損金が発生していれば欠損金を引く
もし前期以前に欠損金が発生して、まだ所得と相殺されていないもの(繰越欠損金)があれば、ここまで計算してきた金額から、その欠損金を引きます。
課税所得から税率をかけて法人税が算出される
加算するものと減算するものを解説してきましたが、規模の小さい会社であれば上記のもので関係してきそうなのって法人税と住民税くらいですよね?
となるとほとんどの場合、損益計算書上の「税引前当期純利益」から欠損金があれば欠損金をひくだけで計算上ほとんど問題ありません。
そう考えるとめちゃくちゃシンプルですよね?今までの話が難しいと感じる方はこれだけ理解するだけでもほぼ問題ありません。
そしてこのようにして計算した金額を「課税所得」と呼んでいます。名前は覚える必要ありません。
この課税所得が計算できれば、あとは税率をかけるだけです。税率は小規模な法人であれば2種類ありますので、次のように計算します。なお厳密には課税標準の千円未満は切り捨てをした上で計算します。
①課税所得800万円まで:15%
②課税所得800万円超の部分:23.2%
①と②の合計が法人税額となります。
たとえば課税所得が1,000万円と算出されたとしたら、
①800万 × 15% = 1,200,000
②200万 × 23.2% =464,000
①+②=1,664,000円 となります。
最後に特別控除があれば法人税額から引く
ここは少し専門的になってしまいますが、たとえば試験研究費や所得拡大税制などの特別控除とよばれるものがあれば、さらに税額を引くことができます。
期中の予測段階ではここを考慮するのは難しいですが、そもそも適用がないことがはっきりしていればここは無視して結構です。
社長一人の会社であるとか、設備投資をあまり行わないような会社であれば関係のないケースがほとんどです。
そしてこの特別控除を引いて、百円未満切り捨てをした金額が法人税となります。
まとめ
このように、法人税の計算は加算するものと減算するものがわかれば、それほど難しいものではありません。また税金の予測だけであればそこまで厳密に計算しなくても大きな影響がないこともあります。
なお決算時に発生する税金は地方税や、場合によっては消費税も発生します。
地方税についてはケースによってかなり税率は変化するのですが、ここはザックリ先ほど計算した課税所得の7%+70,000円と考えてしまいましょう。あくまでも概算を予想するのが目的ですからシンプルにこれで大丈夫です。
決算の2ヶ月前くらいまでに税額の予測をして、利益がかなり出てしまいそうだということが把握できれば、決算までの残った期間で節税対策をとることができます。
節税対策は決算が来るまでに済ませておかないといけないケースがほとんどですので、税額を予想しておくことは非常に重要になります。
そして顧問税理士がいない場合、具体的な節税対策については税理士にスポットで相談すればよいと思います。
特に決算申告のみを税理士に依頼している法人の場合、決算が終わってから税理士に接触するということが多いですよね。そうではなくて、できれば決算より数ヶ月前くらいから税理士に接触し、節税対策について相談をしておくことで、余計な税金を払わずに済むことができるのです。
是非会社経営者の方は今回の内容を理解して頂き、申告時にいきなり多額の税金を払うことのないよう節税対策をとってみましょう。