これから起業されるまたは起業されて間もない方々のために役に立つ会計や税金の情報を提供できればと考えております。
できるだけ自分の経験なども踏まえてわかりやすく解説していきたいと思いますので宜しくお願いします。
今日は1つ目の「税務署・都道府県税事務所・市町村への届出」
についてまとめてみました。
Contents
税務署・都道府県税事務所・市町村への届出
法人設立時に税務署・都道府県税事務所・市町村に提出するものは主に以下のとおりです。
届出書の名称 | 提出先 | 提出期限 |
法人設立届出書 | 税務署・都道府県税事務所・市町村 | 設立日から2ヶ月以内 |
青色申告の承認申請書 | 税務署 | 設立日から3ヶ月後の日と決算日のいずれか早い日の前日 |
給与支払事務所等の開設届出 | 税務署 | 給与支払事務所設置日から1ヶ月以内 |
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 税務署 | 適用を受ける月の前月末日 |
その他必要の応じて提出するもの | ー | ー |
このうち重要な届出については以下で説明します。
青色申告の承認申請書
おそらく一番大切な届出は青色申告の承認申請書です。
青色申告を選択すると複式簿記による帳簿作成義務、つまり簿記の知識が必要となりますが、税務上のメリットは大きいです。
青色を選択すると、税金を直接控除することができる税額控除、固定資産の減価償却費を増やして所得を低くできる特別償却、赤字になってときに来期以降の所得から控除できる欠損金の繰越控除などがあります。
こちらは提出期限に注意が必要です。
「設立日の3ヶ月後の日の」または「決算日」の前日までに提出しないと受けられません。(なお郵送で提出する場合には消印日が提出日になります。)
あるクライアントで以前関与していた税理士事務所がこれで失敗したケースがありました。
この事務所では青色申告承認申請書の提出期限が設立日の3ヶ月後の日、つまりたとえば5月8日設立であれば、8月8日までが提出期限(決算日は9月30日とします)だと勘違いしておりました。本来は8月7日が提出期限なのですが、その8月8日に提出したため青色申告が適用できなかったということがありました。
この期は何千万もの欠損金が発生していていたため、これが全額繰越控除できなくなってしまいました。来期以降黒字が発生しつづけたとしたら税額にすると1千万円ほど損する可能性があります。
これはとても恐ろしい話です。本当に気をつけなければなりません。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
給与や報酬を払ったりする場合には源泉徴収(支払額から一定の税金を天引きして税務署に納付すること)の義務が発生します。源泉徴収した税金は基本的には支払をした月の翌月10日までに税務署に納付しなければなりません。
従って給与を支払っている場合には基本的には毎月源泉徴収した税金を税務署に納付する必要がありますが、給与の支払をする人員が常時10人未満である場合にこの届出書を提出しておけば、半年に1回の納付で済みます。
この場合、1月~6月までに源泉徴収した税金は7月10日まで、7月~12月までに源泉徴収した税金は翌年1月20日までに納付することになります。
なお源泉徴収をしなければならない支払は給与をはじめとして色々な種類がありますが、この制度が使える対象としては
- 給与・賞与など
- 税理士や司法書士等の士業への報酬
のみになります。それ以外の種類で源泉徴収するものについては毎月納付が必要ですので注意して下さい。
またこの届出書の効力はを提出した月の翌月から発生するため、提出した月に源泉徴収した税金については原則どおり翌月10日までに納付しなければなりません。
こちらはよく納付漏れになるケースが多いので注意が必要です。
消費税課税事業者選択届出書
また必要に応じて提出するものの中では消費税課税事業者選択届出書が重要な届出書です。
(消費税の届出関係はかなり重要かつ複雑なので、後日まとめてみようとは思います。)
資本金が1,000万円未満の場合、通常設立1期目は消費税の申告をしなくても良い(免税事業者といいます)のですが、1期目に多額の設備投資があったり輸出販売が多いケースでは、消費税課税事業者選択届出書を提出して消費税の申告をする(課税事業者)を選択をすれば、消費税が還付される可能性があります。
こちらの提出期限は設立1期目に適用する場合は1期目の決算日までです。なお2期目からこの適用を受ける場合も同じで1期目の決算日までとなります。(2期目以降は前期末日までとなります。)
ただしこちらを提出すると2年間(場合によって3年間)は免税事業者の要件にあてはまっていても強制的に課税事業者になってしまいますので、慎重に判断する必要があります。
申告期限の延長関係
また提出したほうがいい届出書としては申告期限の延長の特例申請書(税務署)と申告書の提出期限の延長の処分等の届出書・承認等の申請書(都道府県税事務所)です。
これを提出しておけば法人税申告書・都道府県税に提出する申告書・市町村に提出する申告書については通常決算日から2ヶ月以内が提出期限なのですが、3ヶ月以内にすることができます。(消費税申告書は2ヶ月以内ですので注意して下さい。)
ただしこちらは定款の記載についても株主総会を事業年度終了日から3ヶ月以内に開催するとしておく必要があります。定款は法人の設立登記時に記載事項を決定しますので注意しておくようにしましょう。
なお市町村に対してはこちらの書類の提出は不要です。都道府県税事務所に提出すれば市町村へ通知されることになっているためです。