事業で使うものを買ったときに消耗品になるものと減価償却資産になるものの違い

事業を行う上でさまざまなものを購入する必要があります。

この事業で使うために購入したものについては、基本的には経費になるため、たくさん購入すればそれだけ税金は安くなっていきます(自宅で使うものなど、個人的なものは経費になりません)。

決算が近づいて、たくさん利益が出て税金が多くなりそうだからといって、むやみにものを購入しても、ものによっては税金を減らす効果が低いものもあります。

ものによってどのように取り扱いが違うのか理解し、節税を効果的に行うようにしましょう。

 

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一括で経費にできるかどうかの判断

一括で経費にできるものであれば、購入したときの全額その期の経費にすることができます。

そしてその基準は10万円未満であるかどうかです。

10万円未満であるものは、たとえばノートPCでも一括で経費にすることができます。

逆に10万円以上のものについては減価償却資産というものになり、基本的には法律で定められた年数で経費を按分して計上しなければなりません。

つまり、決算期末に購入してもその期の税金を減らす効果は少なくなってしまいます。

参考→法人設立したら知っておきたい会計のこと4「減価償却という概念」

ただし減価償却資産に該当したとしても、トータルで経費になる金額は最終的に同じになります。とりあえず目の前の今期の税金を減らしたい!という場合には極力10万円未満のものを選んで購入するのが良いと思います。

 

金額の計算方法

10万円の判定については税込金額で行うのか、税抜金額で行うのか、という問題があります。

実はこれは会計処理のしかたによって変わります。

これは会計の話になってしまいますが、会計処理方法は税抜経理方式税込経理方式というふたつの方法があります。そしてどちらの処理方法を選択するかは自由です。

ということであれば税抜経理方式を選択した方が10万円までの範囲が広いですよね。したがって一括で経費になるかどうかを判定する上では税抜経理方式を選択した方が有利ということになります。

なお、消費税の納税義務がない免税事業者の場合には消費税というものを認識しないことになるので、すべて税込金額で判定する、とお考え下さい。

したがって免税事業者の場合には税込金額で10万円未満のものが一括で経費にできます。

 

通常取引される1単位として取引される単位ごとの金額で判定

よくある例として応接セットなどは、机と椅子は1組で取引され、カーテンなども1枚ごとでなく、2枚1セットで取引されるのが通常であるとされています。

このようなものは1組、1まとめごとの合計の金額で10万円未満かどうか判定しなければなりません。したがってこれらの領収書がたとえ別々で発行されたとしても、合計の金額で判定することになります。

複数でセットになっているようなものについては注意が必要になります。

 

運搬費などの付随費用がある場合

あまりないケースだとは思いますが、たとえば何か大きな備品などを購入し、運送会社に配送を依頼した場合などは、この運送費も判定の金額で考慮しなければなりません。

普通は配送してもらう場合でも、その購入した店舗で配送まで請け負ってもらうことが多いかと思いますので、購入した領収書が判定の金額になることが多いと思います。

 

青色申告の場合は30万円未満までOK

青色申告の届出を提出している場合には、上記の判定の金額が10万円以上30万円未満であればすべて一括で経費にすることができます。

ただし年間のそれぞれの資産の合計が300万円に達するまでとなります。

たとえば28万円のものを15個購入した場合、

28万 × 10個 = 280万円

28万 × 11個 = 308万円

となり、11個目は300万円を超えてしまうので、10個までがこの制度の対象となります。

なお、法人で設立1期目などの月数が12ヶ月ないような場合、300万円を12でわり、その事業年度の月数をかけた金額までしか使えませんのでご注意下さい。

 

10万円以上20万円未満のものは3年間で償却することもできる

こちらは青色申告でなくても使うことができる制度です。10万円以上20万円未満のものは一括償却資産とよばれ、購入した期から3年間で按分した金額を経費計上することができます。

この場合は期の最初の月に買っても決算月に買っても経費にできる金額は同じで、3で割った額になります。

ただ一般的には青色申告の方が多いと思いますので、通常前述したように300万円までは一括経費にしたほうが税金が安くなります。

ではなぜこの制度を紹介したのか?

これは償却資産税を考慮してほしいからです。

参考→法人設立したら知っておきたい税金のこと3「法人に発生する税金は何があるか」

償却資産税の申告をする上で、一括償却資産は償却資産の対象とならず、青色の制度を使った場合は償却資産の対象となります

法人税の計算上、どちらの制度を使っても、いつかは全額経費にすることができるので、法人税を減らす効果としては同じですが、償却資産税としてカウントされてしまうと、こちらは一定額を払う必要があるのです。

ただこれもどちらが有利かは一概にいえません。

償却資産税の申告では、課税の対象となる金額が一定額の達するまでは発生しないことになっています。

したがって青色の制度を使ったとしても、償却資産税が発生しないこともあります。

このあたりは少し複雑ですので、税理士等へ相談の上決定されるのが良いと思います。

 

まとめ

今回は節税のための内容になっております。

もうひとつ大事なことですが、節税のためにいろいろなものを買うということは、それだけお金が減ってしまうということです。

一括で経費にできるからといって、必要のないものまで買っては元も子もないです。

税金を減らすためといっても、本当に必要なものを前倒しで購入する、ということが大事だと思います。

 

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