法人設立したらやっておくべき会計や税務のこと3-2「消費税対策2 消費税の還付を受けられるケースとは」

前回でも述べましたが消費税を有利にするための対策の方法としては、還付を受けられるように必要な届出を行うまたはそれら届出を失効させるための届出を行う、などを必要な時期に行うということです。

 

法人設立したらやっておくべき会計や税務のこと3-1「消費税対策1 消費税の計算方法・納税義務の判定方法」

 

ここでは基本的に還付を受けるための方法をまとめたいと思います。

届出ですが、具体的には「課税事業者選択届出書」を有効に使って消費税の還付を受けることになります。

 

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課税事業者選択届出書

この届出書を提出すると、本来であれば消費税の納税義務がない事業者(免税事業者)だけれど、あえて納税義務がある事業者(課税事業者)を選ぶことができるようになります。

前回「消費税の計算の基本」述べましたが、この計算で消費税額がマイナスになるようなケースでは還付を受けることができます。ただし還付を受けるためには納税義務がある事業者(課税事業者)でなければならないのです。

納税義務がない事業者(免税事業者)では還付を受けられません。

したがって消費税額がマイナスになると想定される期についてはこの「課税事業者選択届出書」を前期の決算日までに提出しておく必要があります。(提出期限は前回述べましたように前期中=前期の決算日までになります。)

なおこの課税事業者選択届出書を提出すると、最低でも2年(ケースによっては3年)はこの効力が強制的に継続しますから、2期目も必ず課税になります。最短でも3期目から要件を満たせば免税事業者に戻ることができます。

なので1期目で還付を受けられても、2期目で消費税がたくさん出てしまうのであれば、トータルで考えると免税事業者の方がよかったということもあります。

本当にこのあたりはややこしいと思います。

それでは具体的なケースをみていきます。

輸出の多い商売

多少語弊はある言い方にはなるのですが、輸出というのは消費税の計算上、消費税の対象となる収入に入らないと考えて下さい。しかし費用の方は他の商売と同じように消費税の対象となるものが普通に発生します。

したがって前回の計算方法で考えますと、輸出が多いと消費税の対象となる収入は少ないのにも関わらず、消費税の対象となる費用が多くなり、消費税額がマイナスになってくるのです。

したがって還付が発生するケースになりますね。

よって設立1期目からこのような商売形態である場合には課税事業者選択届出書を提出して1期目から還付を受けることができます。

なお届出書の提出期限は原則前期中と述べましたが、設立1期だけは1期中に提出すれば良いことになってます。こちらもご留意下さい。

設立1期目などで売上よりも仕入が先行している場合

在庫をある程度持ちながら商売を展開していく場合、設立1期目などは特に仕入が先に発生し、その後売上が発生していくのが普通かと思います。そうなると1期目はある程度の金額の仕入があるのに売上はほんの少ししかない、みたいなことが起こりえます。

そうなるとこちらも消費税額がマイナスになるということで、還付が発生するケースになります。

よってこちらも輸出販売と同様に課税事業者選択届出書を1期中に提出しておく必要があります。

しかし実はこの場合は注意が必要です。

ちょっと難しい話になってしまいますので詳細は述べませんが、こういうケースですとおそらく3期目は免税事業者になることが多いと思います。2期目は課税事業者で3期目は免税事業者になることになりますね。

この場合、2期目の期末在庫に係る消費税は消費税の計算上、ひくことができないことになっています。つまり消費税額が増加する方向になってしまいます。

なので状況によっては課税事業者を選択をしないほうがいいケースもあるのです。

このあたりは本当に判断が難しいですし、シミュレーションをして選択したとしてもそのとおりいかなかった場合は損をする可能性も十分あります。

金額の大きい設備投資がある場合

飲食業など店舗が必要な商売などは設立1期目にかなりの設備投資をすることになると思います。

となりますと、消費税の計算上の消費税の対象となる費用がかなり大きくなりますから、消費税額がマイナスになって還付を受けられるということになります。先ほどと同じような仕組みですね。

なおこの設備投資ですが、消費税法上の「調整対象固定資産」というものに該当することが多いかと思います。

先ほど課税事業者選択届出書を提出するとの2年間強制的に継続すると述べましたが、この期間中に調整対象固定資産を取得すると、さらにプラス1年効力が継続されます。

課税事業者の期間がそれだけ長くなりますから、そこまでのトータルとして還付を受けた方が有利かどうかを判断しなければなりません。商売が大きく成長すると消費税額も増えますから、多少の還付くらいでは損をしてしますこともありえるわけです。

何度も言いますが、本当にややこしいと思います。

届出書の提出期限が過ぎてしまった場合の対処法

明らかに課税事業者選択届出書を提出したほうが有利だったのに、前期中に提出するのを忘れてしまった場合の対処法について述べたいと思います。

消費税は税金の計算をする期間の単位である「課税期間」というものを1年でなく3ヶ月とか1ヶ月に短縮する制度があります。

「課税期間特例選択・変更届出書」という届出書を提出して短縮することが可能です。

課税事業者選択届出書を提出して還付を受けたかったのに、期限内に提出するのを忘れてしまった場合には、第1四半期中にこの「課税期間特例選択・変更届出書」を提出して、課税期間を3ヶ月に短縮して下さい。

その上で課税事業者選択届出書を提出します。そうすれば第2四半期から課税事業者になることができるのです。

ですから第1四半期の分については還付が受けられないけれど、第2四半期以降は還付を受けられますので、被害を最小限にとどめることができます。

設立1期であれば1期中に提出すればよいので問題ないかと思いますが、たとえば第2四半期以降に設備投資がある場合で、届出書の提出を忘れた場合などは有効化と思うので覚えておくと良いと思います。

 


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