前回は消費税を有利にするために対策として還付を受けるための方法を中心にまとめました。
法人設立したらやっておくべき会計や税務のこと3-2「消費税対策2 消費税の還付を受けられるケースとは」
今回は消費税は発生してしまうけれど、税額を減らすための方法についてです。具体的には「簡易課税制度選択届出書」を提出することによって消費税額を減らせるケースについてまとめていきます。
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簡易課税制度選択届出書
この届出書を提出すると、前々期の消費税の対象となる収入が5,000万円以下となる期については簡易的な消費税の計算方法で消費税を計算することになります(強制的に適用される)。
なお簡易課税という名称ですので簡易的な計算方法ではあるのですが、実際には消費税額が有利になるかどうかで簡易課税を選択するかどうかを判断します。
通常の消費税の計算方法は本則課税といいます。ですから消費税には本則課税と簡易課税という2種類の計算方法が存在します。前々回で書きました消費税の計算方法は本則課税の計算(のめちゃくちゃザックリ版)です。商売の内容によっては簡易課税で計算したほうが消費税が少なくなるケースがございます。この場合は簡易課税制度選択届出書を提出しておきます。
なお基本的には適用したい期の前期中に簡易課税制度選択届出書を提出しておかなければなりません。また前々期の消費税の対象となる収入が5,000万円を超えていると届出を提出してあったとしても本則課税が適用となります。
またこの届出書を提出すると、最低でも2期(ケースによっては3期)は継続して強制適用となります。
簡易課税制度の計算の基本
簡易課税のザックリとした計算方法は次のとおりです。(複数業種の場合の計算は割愛します。)
(消費税の対象となる収入 - 消費税の対象となる収入 × みなし仕入率) × 8% = 消費税額
みなし仕入率ですがこちらは下記のように業種によって異なります。
事業区分 | みなし仕入率 | 業種 |
第1種事業 | 90% | 卸売業 |
第2種事業 | 80% | 小売業 |
第3種事業 | 70% | 製造業・建設業 |
第4種事業 | 60% | 1~3、5・6種以外 |
第5種事業 | 50% | 金融業・サービス業 |
第6種事業 | 40% | 不動産業 |
計算方法からわかるように、本則計算のように消費税額がマイナスになることはなく、簡易課税を選択すると還付を受けることはできません。下手に簡易課税を選択していると、還付を受けられるケースなのに受けられなくなってしまうということもありえます。
したがって前回消費税対策2で述べた還付を受けられるケースのように、還付を受けたい場合には簡易課税を選択してはいけないということになります。
有利になりやすいケース①事業用不動産賃貸業
不動産賃貸業の場合、業種区分としては第6種に該当するのでみなし仕入率が40%になります。ということは消費税の対象となる費用が収入の40%で計算されることになります。
不動産賃貸業に関しては消費税の対象となる費用がそれほど多くないのが一般的です。建物の大規模な修繕などがあれば別ですが、それ以外では通常それほど大きな費用が発生しません。したがって収入に係る消費税のの40%をひくことができるのであればかなり有利なことが多いのです。
ちなみに居住用の不動産賃貸業については、それだけでは消費税の対象となる収入が発生しないので、基本的に課税事業者になることはありません。
有利になりやすいケース②金融業
金融業の場合、業種区分としては第5種に該当するのでみなし仕入率が50%になります。ということは消費税の対象となる費用が収入の50%で計算されることになります。
金融業についても不動産賃貸業と同様ですが、人件費などの割合が多く、消費税の対象となる費用はそれほど多くありません。また金融業の収入は基本的に貸付金の利息であり、消費税の対象となる収入ではないので、課税事業者になるケースもまれかもしれません。
ただ、たまたま課税事業者に該当してしまった場合、本則計算ですと課税売上割合というものが絡んでくるのですが、この影響でかなりひくことができる消費税額が少なくなってしまいます。
そういった関係もあり、収入に係る消費税の50%もひくことができる簡易課税が有利なことが多くなります。
有利になりやすいケース③粗利率の高い商売(消費税の対象となる収入の場合)
粗利率の高い商売すべてが該当するわけではないと思いますが、本則課税で計算した場合に粗利率が高いということは、消費税の対象となる収入が多く、その収入に係る消費税が多くなります。
逆に相対的に費用自体が少ないため、消費税の対象となる費用も少なく、ひくことができる消費税が少なくなります。
したがって納付する消費税額が多くなります。
簡易課税が適用できる場合には、適用されるみなし仕入率にもよりますが、特に卸売業などであれば簡易課税の方が有利になるケースは多いのではないでしょうか。
こういったケースでも簡易課税を検討する価値はあると思います。