法人設立したら知っておきたい会計のこと4「減価償却という概念」

以前損益計算書の記事でも書きましたが、損益計算書の販売費及び一般管理費という区分に「減価償却費」という科目が出てきます。

この概念は少しわかりにくい部分もありますので、会計や簿記の知識がない方向けに説明したいと思います。

 

以前の「損益計算書」の記事はこちらです。

 

法人設立したら知っておきたい会計のこと2「損益計算書を理解する」

 

Contents

減価償却の概念①有形の場合

まず減価償却というもののザックリした概念です。

事業を行う上ではいろいろな「物」を購入して事業のために使用していきます。具体的にはパソコン、プリンター、デスク、紙、ボールペン、営業車などなどいろいろあります。

 

ここではまず「物」に限定して列挙致しました。

まずこの「物」の中で少額のものや、短期間で使用消耗されるもの、具体的には消耗品など10万円未満のものや使用期間が1年未満のものについてはその購入金額を一括で経費にすることになります。基本的には購入金額を按分することはしません。

上記の具体例の中では紙、ボールペンは使用期間が1年未満ですので一括経費で処理します。

 

逆に「物」の中で金額が10万円以上かつ使用期間が1年以上であるものについては有形固定資産と呼んでいきます。そしてその有形固定資産のうち、建物や機械など期間の経過とともに価値が減少していくものについては減価(価値の減少)償却をしていくということになります。

上記の具体例の中ではパソコン、プリンター、デスクのうち10万円以上のものは減価償却の対象となります。

 

また期間の経過とともの価値が減少しないものについては減価償却はしません。具体的には土地がそれに該当します。

 

会計というのは収益と費用を対応させていくものですので、使用期間が短期であれば一括経費処理、長期であればその期間で費用按分、価値が減少しなければ経費にしない、ということになっていきます。

 

減価償却の概念②無形の場合

先ほど使用期間に応じて費用を按分していくということを述べました。

目にみえないような「物」、たとえばソフトウェアなどでも長期間にわたって使用するものがあります。こういったものは無形固定資産などと呼ばれますが、減価償却の対象となります。

一括経費にするか減価償却にするかは有形の場合で記載した基準と全く同じになります。

 

減価償却費の計算方法

次に減価償却費の計算方法です。

減価償却費を計算するための要素としては、購入金額・償却方法・耐用年数の3つが必要となります。

 

①購入金額・付随費用

購入金額は実際にその物を買った金額と、購入に際して支払った運送料などの付随費用も加算します。どこまでを付随費用とするのか、ということについてはケースバイケースになってきます。

考え方としては、物を購入して実際に使えるようにするために必要な支払は基本的にすべて付随費用ということになります。

 

②償却方法

会計の専門家でなければ定額法と定率法だけ知っておけばよいと思います。

定額法は毎期同額を減価償却費としていく方法、定率法は毎期一定の率を減価償却費としていく方法です。特徴としては購入して間もない時期は定率法の方が償却金額が大きくなります。したがって節税という側面から考えると定率法の方が有利といえます。

ただしもちろんトータルとしての償却費はどちらも同じになりますので有利・不利はありません。

償却方法は資産の種類ごとに選択することができますが、建物・建物付属設備(内装など)・ソフトウェアは定額法しか使うことができません。その他の固定資産については選択が可能です。

 

③耐用年数

税法では有形固定資産の種類や材質などによって細かく耐用年数が定められています。一般的にはその耐用年数を用いてその年数で費用を按分していくことになります。

建物であれば長期間使用できるので50年など、パソコンであれば短期間で交換が必要なので4年などです。

 

なお減価償却費を計上すると①の金額から減価償却費を引いた残りの金額が貸借対照表の固定資産の部に記載されていくことになります。

期の途中で固定資産を購入したときの減価償却費

期の途中で固定資産を購入した場合には、償却費を使用を開始した日から決算日までの月数(1月未満の期間は1月でカウント)で按分して経費にしていきます。

したがって節税をしたいのであれば決算月にたくさん固定資産を購入しても1月分しか償却費にならないので、節税効果は期待できません。

こういった対策を早めにとるために、期中でも会計数値を早期に把握することは重要にだと考えています。

 

中小企業者(資本金1億円以下)・青色申告の場合

青色申告を適用していて中小企業者というものに該当する会社であれば、30万円未満の固定資産を一括経費にすることができます。ただし使える金額の枠が設けられており、金額の合計が300万円までとなっています。300万円を超えたものについては定額法や定率法による通常の減価償却費を計上します。

節税という観点からはこちらはかなり有効な制度になっています。

なお中小企業者の定義は少しややこしい部分もありますが、基本的には大企業の支配がない資本金1億円以下の法人であればほぼ該当します。

 

固定資産を廃棄したり使用しなくなったとき

減価償却費の計算方法で、耐用年数にわたって費用を按分すると述べましたが、その期間内に固定資産を廃棄したり、使用しなくなったりしたら、まだ償却をしていない金額をその期に一括経費処理をします。

その固定資産は処分後は使用していないのですから、収益に貢献していませんので処分後に減価償却費を計上することはないということになります。

 


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