前回の記事で会計の基本について説明させて頂きました。
前回の内容がわかると、今度は決算書の見方がわかるようになります。
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決算書の種類
会社が作成する決算書には以下のものがあります。上場企業などではこれ以外のものもありますが、ここでは中小企業向けということにします。
- 貸借対照表(B/S)
- 損益計算書(P/L)
- 製造原価報告書(C/R) ※製造業のみ
- 株主資本等変動計算書(S/S)
私の考えでは経営者の方はまず損益計算書を理解できれば十分ではないかと思っています。
自分の会社の経営がうまくいっているかどうかはこの損益計算書が一番わかりやすいと思います。もう少し経営が高度になっていって銀行融資を受けるとか、他の会社の企業価値を知りたいなどといった場合には貸借対照表の見方も必要になってくるかと思います。
今回は損益計算書についてまとめてみたいと思います。
損益計算書とは何か
私はまず、経営者の方は「損益計算書」を理解できることが最初のステップだと考えています。俗にいう「P/L(Profit and Loss Statement)」と呼ばれているものになります。
損益計算書は、会社の一期間(一般的には1年)の経営成績をあらわす書類になります。。
経営成績とは、この期間でどれくらい儲かったのか、ということです。基本的には儲けが大きいほどこの会社の経営成績は良い、ということになります。
前回会計について述べましたが、損益計算書というのは収益と費用から成り立っております。前回は会社の儲けというものをザックリ収益ー費用で考えていましたが、損益計算書ではそれをもう少し種類ごとに分類して作成した書類だと考えて頂ければよいと思います。
前回記事の「会社の儲けはどう計算するか」はこちらです。
法人設立したら知っておきたい会計のこと1「会社の儲けはどう計算するか」
売上高
売上高は特に説明することはないと思いますが、本業で得た収益のことです。
注意点としては、前回にも述べましたが、入金した時点で売上を計上するのではなく、商品であれば商品を引き渡した時点で、サービス業などであればサービスの提供が完了した時点で計上します。
したがって月末〆翌月末支払で決済しているならば、同じ期間で考えた場合、売上の金額と入金の金額はずれることになります。
この売上という項目は商売の規模をみるのに最もわかりやすい数字といえます。
売上原価
売上原価とは、商品の仕入または製造業であれば製品の製造にかかった費用になります。
これは前回原価というところで述べましたが、必ず売上と対応していなければなりません。商品であれば売上のところで計上された商品の仕入代金、製品であれば売上で計上された製品の製造原価ということになります。
では売上原価の計算方法はどのようにするのでしょうか。売上に計上した1つ1つの商品または製品をピックアップして計算することもできないこともないでしょうが、簡便的に以下の方法で計算するのが一般的です。
①期首に残っていた商品・製品の金額 + ②今期中に仕入または製造にかかった費用 - ③期末に残っていた商品・製品の金額 = 売上原価
①期首に残っていた商品・製品というのは前期には販売が完了していないものになりますから、今期の売上原価になる可能性があるので一旦加算します。
②今期中に仕入または製造にかかった費用も①と同様今期の売上原価になる可能性があるのでこれも一旦加算します。
③期末の残っていた商品・製品というのは今期にまだ販売が完了していませんので、この分はまだ売上に計上されていません。したがって今期の売上原価には含まれないことになります。この分は上記①②の合計からひくことになります。
なお、③の金額を把握するために行う作業が「棚卸」とよばれるものになります。期末の商品・製品の数量を数えることによって金額を算出します。
在庫管理表など帳簿上のみで数量を数える方法を「帳簿棚卸」、実際に現物を数える方法を「実地棚卸」といいます。「実地棚卸」のほうがズレが生じないので数量を正確に把握することができます。
売上総利益
売上総利益は粗利ともよばれていますが、売上から売上原価をひいた金額です。したがってこれは商品や製品の付加価値をあらわす金額といっていいと思います。
商品や製品が魅力的であったり希少性が高いものであればこの金額を大きくすることができます。会社の利益を高めていくためにはこの金額を大きくできるような手段を考えていく必要があります。そして会社の稼ぐ力をあらわすものですので、損益計算書の項目で最も重要なものといえると思います。
またこの金額から売上総利益率を算出します。
売上総利益率 = 売上総利益 / 売上高 × 100
この指標も重要で、一般的には会社の商売で稼ぎ出す力を評価するにはこの売上総利益率で判断することが多いです。この率が高い商売というのは付加価値の高い商売といえます。いわゆる儲かっている会社というのはここの率が高いことが多いです。
販売費及び一般管理費
いわゆる経費とよばれるものと考えていいと思います。売上原価は売上との対応関係が明確ですので、売上を獲得するために直接的に要した費用であるといえます。
これに対し販売費及び一般管理費は売上を獲得するための間接的な費用といえるかと思います。
こちらは売上原価と違って期間的に対応させることになります。決算書は通常一事業年度ごと(普通は1年)に作成しますので、この期間中に発生したものを計上することになります。
したがってたとえば2年契約の保険料などがあった場合、通常は月割りにして今期の期間分のみを費用に計上することになります。
営業利益
営業利益は以下の計算式で算出されます。
売上総利益 - 販売費及び一般管理費 = 営業利益
これは会社の本業でどれだけ儲けが出たかをあらわした金額といえます。販売費及び一般管理費は間接的ではありますが、売上を獲得するために犠牲となった費用ですので、この金額が本業の儲ける力ということになります。
いくら売上総利益が大きくても、販売費及び一般管理費が多すぎると営業利益が少なくなってしまいます。会社の利益を多くしようと思ったら、販売費及び一般管理費でムダな部分は削減していく必要があります。
売上総利益は社内の努力だけではどうにもできない部分がありますが、販売費及び一般管理費はある程度社内でコントロールできます。利益を改善するときにいち早く販売費及び一般管理費の中でムダな部分を見直すというのは有効な手段といえます。
営業外損益
営業外収益と営業外費用のことをいいます。
これらは本業以外で毎期経常的に発生する収益・費用の項目になります。代表例としては受取利息や支払利息になります。
支払利息などは借入金の利子などが多いと思いますが、これは金融費用という扱いなので営業外損益となります。
経常利益
営業利益は以下の計算式で算出されます。
営業利益 + 営業外収益 ー 営業外費用 = 経常利益
経常利益は本業も含め、会社の毎期経常的に発生する儲けをあらわしています。また金融機関は融資をするときに債務償還年数という指標を計算するのですが、一般的にはこの経常利益をもとに算出します。
ここが多いほど借入金の返済原資が多いので、債務償還年数が小さくなり、金融機関側は融資リスクが低いと判断することになります。
特別損益
特別利益と特別損失のことをいいます。
これらは毎期経常的に発生するような収益・費用ではなく、突発的または一時的に発生するような収益・費用の項目になります。代表例としては固定資産や有価証券の売却損益、災害による損失などになります。
税引前当期純利益
税引前当期純利益は以下の計算式で算出されます。
経常利益 + 特別利益 ー 特別損失 = 税引前当期純利益
ここまできますと会社のトータルの儲けをあらわす項目になります。ただし税引前ですので、法人税や地方税の納税額を考慮しない利益です。
当期純利益
当期純利益は以下の計算式で算出されます。
税引前当期純利益 ー 法人税等 = 当期純利益
一期間の会社の最終的な儲けをあらわす項目になります。
まとめ
損益計算書には会社の経営状態というのがかなり盛り込まれていると思います。ただしこの損益計算書というのは会社にとって重要な書類ではありますが基本的に外部向け(税務署、金融機関など)のものになります。
経営がある程度軌道にのりはじめたら月次でこの損益計算書をつくっていき、経営に活用していくのがよいと思います。月次決算については別の機会で記事を書きたいとは思いますが、タイムリーに月次で損益計算書をつくることができれば、かなり経営に役に立つはずです。
まずは前回の記事の「会社の儲けはどう計算するか」と今回の記事の「損益計算書」をきちんと理解して頂ければ、月次の損益計算書を経営に有効活用できるようになってくると思います。